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特集 細胞の分子構造と機能―核以外の細胞小器官 2.小胞体
小胞体ストレスと心血管炎症
著者: 古橋眞人1
所属機関: 1札幌医科大学 内科学第二講座
ページ範囲:P.386 - P.387
文献購入ページに移動 ●小胞体ストレス応答と慢性炎症疾患
近年,がん,アルツハイマー病などの神経変性疾患,糖尿病,動脈硬化性疾患,自己免疫疾患など種々の疾患の局所において,炎症細胞の浸潤と慢性的な炎症が観察され,それらが組織変性と疾患の重症化の重要な要因となることが明らかにされてきている。一方,小胞体は分泌タンパク質や膜タンパク質の品質を管理するオルガネラとして重要な役割を果たしているが,小胞体の機能に破綻が生じると,高次構造の異常なタンパク質(unfolded protein)が蓄積し,細胞は恒常性を維持するためにUPR(unfolded protein response)と呼ばれる様々な小胞体ストレス応答を呈するようになる。小胞体にはunfolded proteinが蓄積したことを感知して下流にシグナルを伝える役割を担ういわばセンサータンパク質が存在し,哺乳動物では少なくともIRE1(inositol-requiring enzyme 1),ATF6(activating transcription factor 6)およびPERK(PKR-like endoplasmic reticulum kinase)という3種類の小胞体膜貫通タンパク質によって巧妙に制御されている。
小胞体ストレスによる炎症の誘導には,IRE1の下流のシグナルとしてTRAF2(TNF receptor-associated factor 2)-ASK1(apotosis signaling-regulating kinase 1)-JNK(c-jun N terminal kinase)系と,IKK(IκB kinase)-NF-κB(nuclear factorκB)系の賦活化がある。また,PERK-eIF2α(eukaryotic initiation factor 2α)系の活性化に伴うIκBの減少によるIKK-NF-κB系の賦活化も知られている。近年,小胞体ストレスに伴う炎症の惹起が糖尿病や心血管病を含む慢性炎症疾患と関連することが明らかになってきている。
近年,がん,アルツハイマー病などの神経変性疾患,糖尿病,動脈硬化性疾患,自己免疫疾患など種々の疾患の局所において,炎症細胞の浸潤と慢性的な炎症が観察され,それらが組織変性と疾患の重症化の重要な要因となることが明らかにされてきている。一方,小胞体は分泌タンパク質や膜タンパク質の品質を管理するオルガネラとして重要な役割を果たしているが,小胞体の機能に破綻が生じると,高次構造の異常なタンパク質(unfolded protein)が蓄積し,細胞は恒常性を維持するためにUPR(unfolded protein response)と呼ばれる様々な小胞体ストレス応答を呈するようになる。小胞体にはunfolded proteinが蓄積したことを感知して下流にシグナルを伝える役割を担ういわばセンサータンパク質が存在し,哺乳動物では少なくともIRE1(inositol-requiring enzyme 1),ATF6(activating transcription factor 6)およびPERK(PKR-like endoplasmic reticulum kinase)という3種類の小胞体膜貫通タンパク質によって巧妙に制御されている。
小胞体ストレスによる炎症の誘導には,IRE1の下流のシグナルとしてTRAF2(TNF receptor-associated factor 2)-ASK1(apotosis signaling-regulating kinase 1)-JNK(c-jun N terminal kinase)系と,IKK(IκB kinase)-NF-κB(nuclear factorκB)系の賦活化がある。また,PERK-eIF2α(eukaryotic initiation factor 2α)系の活性化に伴うIκBの減少によるIKK-NF-κB系の賦活化も知られている。近年,小胞体ストレスに伴う炎症の惹起が糖尿病や心血管病を含む慢性炎症疾患と関連することが明らかになってきている。
参考文献
313:1137-1140, 2006
140:338-348, 2010
5:781-792, 2003
7:489-503, 2008
15:1383-1391, 2009
掲載誌情報