特集 細胞の分子構造と機能―核以外の細胞小器官
6.ファゴソーム
オートファジーにおける膜の起源
著者:
渋谷周作1
吉森保1
所属機関:
1大阪大学大学院 生命機能研究科 細胞内膜動態研究室
ページ範囲:P.478 - P.481
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オートファジー(マクロオートファジー)は,酵母から哺乳類まで広く保存されている細胞内メンブレントラフィックの一形態で,細胞が自分の細胞質の一部を「食べる」現象である。オートファジーが細胞内で開始されるときには,隔離膜(またはファゴフォア)と呼ばれる扁平な小胞が細胞質内に現れる。現れた隔離膜は細胞質の一部を包み込むように伸長していき,そして閉じる。隔離膜が閉じたものはオートファゴソームと呼ばれ,典型的には直径0.5-1.5μmの二重膜小胞である。その後,オートファゴソームの外膜がリソソームと融合する。結果として,オートファゴソームの中身の細胞質成分がリソソーム内腔に放出され,リソソーム内の加水分解酵素で分解される。定常状態においてもオートファジーは少しずつ起こっているが,特に細胞が飢餓状態にさらされたときにオートファジーが顕著に誘導されることが知られている。飢餓時には外界からのアミノ酸供給が絶たれてしまうが,細胞は新たなタンパク質合成を止めるわけにはいかないので,オートファジーによって自分の細胞質タンパク質をアミノ酸にまで分解し,新たなタンパク質合成のために使っていると考えられる1)。
タンパク質分解といえば,オートファジーとは別の系であるユビキチン-プロテアソーム系もよく知られている。ユビキチン-プロテアソーム系においては,E3ユビキチンリガーゼがそれぞれの基質タンパク質を特異的に認識してユビキチン鎖を付加する。これが標識となって,基質タンパク質はプロテアソームに補足され分解される。このように,ユビキチン-プロテアソーム系はタンパク質をピンポイントで狙って分解するのに適した系である。