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特集 細胞の分子構造と機能―核以外の細胞小器官 7.リソソーム
オートファジーによるインスリン抵抗性状態の脂肪組織での炎症の抑制
著者: 吉﨑健1 前川聡1
所属機関: 1滋賀医科大学 糖尿病内分泌内科
ページ範囲:P.510 - P.511
文献購入ページに移動細胞内の蛋白質などは老化やストレスなどにより機能不全に陥ると,それ自体が細胞障害を惹起するので浄化される機能が備わっている。細胞内蛋白浄化機構として,リソソーム-オートファジー系とユビキチン-プロテアソーム系が重要とされている。前者は非選択的分解系,後者は選択的分解系であり各種状態により大きく変動する。リソソーム-オートファジー系は隔離膜という小さな小胞が伸張し,細胞質の一部を取り囲みオートファゴソームと呼ばれる二重膜構造体が形成される。その後リソソームと融合することにより,リソソーム内の蛋白分解酵素によりオートファゴソームに取り囲まれた細胞質成分がアミノ酸などの細胞単体レベルまで分解される。一般にオートファジーはマクロ,ミクロ,シャペロン介在性の3種類の異なる過程が含まれるが,本稿ではオートファジーをマクロオートファジーという意味で用いる。
このリソソーム-オートファジー系は古くは誘導的オートファジーと呼ばれ,飢餓時に活性化されリソソームによる分解産物であるアミノ酸を供給するシステムと考えられていたが,最近はどのような細胞においても低いレベルで恒常的に起こっている恒常的オートファジーも重要視されだしている。この恒常的オートファジーは継続的にアミノ酸を供給するためではなく,細胞内構成成分の細胞内浄化に重要と考えられている。実際,オートファゴソームは蛋白質だけでなくミトコンドリアなどのオルガネラも囲い込み分解することより,機能不全を呈した分子の浄化作用に重要と思われる。
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