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特集 神経回路の計測と操作
大脳皮質局所回路でのニューロンのダイナミックな相互作用の観測
著者: 藤澤茂義1
所属機関: 1理化学研究所 脳科学総合研究センター
ページ範囲:P.29 - P.35
文献購入ページに移動 現在,大脳新皮質の研究において一つの重要な挑戦的な課題は,認知行動学レベルでの「脳の機能」に関する研究と,解剖学・細胞生理学レベルでの「局所回路構造」に関する研究をいかに統合していくかということである。新皮質の機能表現については,認知神経科学的観点から多くの重要な研究がなされている1)。一方,新皮質の局所ネットワーク構造を解剖学的および生理学的に丁寧に解きほぐしていく仕事も,近年大きな進展を見せている2,3)。しかし,このような大脳新皮質の認知機能的側面と局所回路構造的側面の両方同時に焦点を当てていく研究は,まだ十分には行われていない。と言うのは,行動中の動物から局所回路におけるニューロンの相互作用や同期活動を直接的に観測することが困難であるからである4-6)。ところが,近年の電気生理学の技術的進展により,動物が行動中でも大脳皮質でのニューロン群の活動を高密度に記録できるようになり,100個というオーダーの数のニューロンの活動を同時に観測することが可能になってきた7)。これらの手法によって,大脳皮質における機能表現と局所回路計算論を関係づける基盤的知識を得られることが期待されている。大脳皮質局所回路の微細構造の中でいかに様々な種類のニューロン群がダイナミックに相互作用をし,高次機能を実現しているのか。本稿では,この認知行動中における大脳皮質の機能と局所回路構造の関係をいかに明らかにしていくかという課題を考察してみたい。
参考文献
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