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文献詳細

雑誌文献

生体の科学64巻1号

2013年02月発行

文献概要

特集 神経回路の計測と操作

神経回路の振動計測と光遺伝学的操作による状態遷移

著者: 虫明元1 大城朝一1 九鬼敏伸1 菊池琴美2 小山内実2

所属機関: 1東北大学大学院 医学系研究科 生体システム生理学分野 2東北大学大学院 医学系研究科 医用画像工学分野

ページ範囲:P.41 - P.46

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 神経系は多数の異なる要素から成り立ち,相互に結合し,機能的に依存しており,さらに可塑性がある。これらの四つの特性を有するシステムは一般的には“複雑系”と呼ばれる。“複雑系”の特徴として,要素の単なる合計でない機能が創発することが知られている。また,神経系は興奮細胞と抑制細胞という拮抗した要素が相互作用するシステムでもある。そのため,細胞レベルから局所回路に至るまで基本的に振動しやすく,実際,神経系には広範に振動が観察される1)。さらに,その神経系は非線形システムであるため,その振動には複雑な相互作用が生じ,例えば“共鳴”や“引き込み”などの現象が認められる。

 振動は相互作用の副産物として随伴している可能性があるが,一方で神経系は振動の特性を巧みに利用している可能性もある。例えば複数の細胞が振動を同期させることで通信する“communication through coherence”という仮説がある2)。しかし振動の特性は有用なものばかりではない。多数の神経細胞の振動が同期し過ぎると,いわゆる“てんかん”の病態にもなる。したがって,振動状態の制御は神経系にとって重要な意義がある。このような振動現象に対してオプトジェネティックス3,4)などの技術の出現により,従来の電気刺激などによる操作方法に比べ選択的な光操作が可能になってきたので,以下に検討したい。

参考文献

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掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1883-5503

印刷版ISSN:0370-9531

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