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文献詳細

雑誌文献

生体の科学64巻1号

2013年02月発行

文献概要

特集 神経回路の計測と操作

膜電位の可視化

著者: 筒井秀和12

所属機関: 1大阪大学大学院 医学系研究科 統合生理学教室 2科学技術振興機構(JST)さきがけ

ページ範囲:P.47 - P.51

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 携帯端末や掃除ロボットの話題が世間を賑わせているように,われわれの生活は様々な電気製品に囲まれ,もはやなくてはならない存在になっている。生き物に目を向けると,そこにも電気現象が関与する「仕組み」がたくさんある。バクテリア,ゾウリムシからヒトまで,運動制御,筋収縮,受精,免疫,細胞分化など様々な局面で膜電位変化という電気シグナルが重要な役割を果たしている。究極は脳・神経機能であろう。神経細胞の複雑なネットワークを神経インパルスが行き交い,そのダイナミックな変化は動物の知的で多様な行動の基礎をなしている。電気製品と生き物とでは電気信号の使われ方が大きく異なる。まず速さ。最新のプロセッサではGHzの周波数でクロックが作動しているが,神経インパルスの時間幅は1ミリ秒程度,周波数ではkHzのオーダーであり,電気製品に比べて6桁も劣る。消費電力はこの逆で,神経細胞が情報処理に使うエネルギーはトランジスタのそれと比較して圧倒的に少ないと見積もられている。また,損傷に対する耐久性も大きく異なる。多くの電気製品では素子や配線がわずか一つ,二つと壊れるとたちまち動作しなくなってしまうが,脳神経機能は非常にロバストで,一部の神経細胞や線維が機能不全に陥ったぐらいでは,通常,大勢に影響はない。そこでは電気シグナルはどのように利用され,極めて柔軟な機能を生み出しているのか。そして,このようなシステムは系統発生や個体発生を通していかに獲得された(る)のか。未知なる世界への扉を少しでもこじ開けようと,膜電位シグナルを可視化するための努力が行われだしてから半世紀以上が経つ。本稿では現在まで続く,この古くて新しい挑戦を振り返る。

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掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1883-5503

印刷版ISSN:0370-9531

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