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特集 神経回路の計測と操作
オプトジェネティクスを用いた睡眠覚醒操作
著者: 山中章弘1
所属機関: 1名古屋大学 環境医学研究所 神経系分野Ⅱ
ページ範囲:P.65 - P.71
文献購入ページに移動 われわれは毎日睡眠覚醒を数回繰り返している。ずっと起き続けていると自然と眠気が生じて脳は眠りに入ろうとする。頑張って断眠(徹夜)すると,起き続けることはできるが,思考,記憶,判断力といった脳の高次機能は著しく低下することが知られている。また,一晩や二晩程度の断眠は可能でも,全く眠らずに活動を続けることは不可能である。動物実験では,長時間断眠させると絶食させたときよりも短い時間で死に至ることが知られている。これらのことから,睡眠覚醒調節は脳自身が自らのために行っており,正常な脳機能を維持するために必須な生理現象であることを示している。1日(24時間)のうち8時間眠るとすると,人生の1/3もの時間を睡眠に費やすことになる。にもかかわらず,睡眠覚醒がどのように調節されているのかについては未だによくわかっていない。睡眠覚醒はすべての神経回路が保存された動物個体でのみ発揮される生理現象である。これまで脳内に無数にある神経細胞の中から,狙った神経の活動を操作する技術が存在しなかったことから,神経活動と睡眠覚醒状態変化を繋げるような実験を行うことが難しかった。しかし,近年開発されて急速に発展している光遺伝学「オプトジェネティクス」を用いることによって,神経活動と行動発現との因果関係について個体を用いて直接解析することが可能となり,その調節の仕組みの一部が解明されつつある。本稿では,オプトジェネティクスを用いた研究で明らかになってきた睡眠覚醒を調節する神経機構について解説する。
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