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文献詳細

雑誌文献

生体の科学64巻1号

2013年02月発行

文献概要

連載講座 細胞増殖・1【新連載】

細胞周期学序説と卵減数分裂停止(上)

著者: 佐方功幸1

所属機関: 1九州大学大学院 理学研究院 生物科学部門

ページ範囲:P.72 - P.79

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 周知のように,細胞はゲノムDNAの複製と分配を繰り返すことで増殖し,DNAの複製から分配までの1サイクルを細胞周期(cell cycle)と呼ぶ。真核生物の細胞周期とその制御の実質的な研究は,様々な生物種の細胞を用いて約40年前から始まった1)(図1)。すなわち,1970年代に,酵母では数多くの細胞周期の変異株(CDCまたはcdc)が単離され,同年代初期には,哺乳動物細胞の融合実験でM期の優位性などが示される一方,カエル卵では卵成熟(M期)を誘起するMPF(M phase-promoting factor;M期促進因子)が見つかった。また,1980年代初めには,酵母でG2/M(およびG1/S)期転移に必須なcdc2(CDC28)遺伝子が単離される一方,ウニ卵では細胞周期依存的に量の増減するタンパク質サイクリンA,Bが見つかった。そして,これらの研究が1980年代終わりに合流し,様々な細胞に普遍的なM期促進因子MPFがCdc2(現在のCDK1)とサイクリンBの複合体であることが判明した。この発見を契機に,細胞周期を制御する様々な分子の同定や機構の解明が爆発的に進み(図1),現在では細胞周期の分野は成熟期に近い成長期にあると言える2)

 本稿本号(上)では,脊椎動物(特に哺乳動物)の細胞を中心に,細胞周期とその制御について概説する(Ⅰ,Ⅱ章)。また,本稿次号(下)では,細胞周期の監視機構や筆者の主要テーマの一つである卵減数分裂停止(未受精卵の分裂停止)について簡単に紹介する(Ⅲ~Ⅴ章)。これらの概説が本誌連載講座「細胞増殖」の序説になれば幸いである。

参考文献

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掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1883-5503

印刷版ISSN:0370-9531

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