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仮説と戦略
酵母プリオンで発見された細胞の新たな生存戦略
著者: 田中元雅1
所属機関: 1理化学研究所 脳科学総合研究センター タンパク質構造疾患研究チーム
ページ範囲:P.88 - P.95
文献購入ページに移動 プリオン研究の歴史は古く,ヒツジのプリオン病であるスクレイピーが感染性疾患であるという報告は1930年代にまで遡る。プリオン病はスクレイピーに加え,ヒトのクロイツフェルト・ヤコブ病(CJD),ゲルストマン・ストロイスラー・シャインカー症候群(GSS),ウシの海綿状脳症(狂牛病)を代表とする神経変性疾患である1,2)。近年では,北米におけるシカのプリオン病の蔓延が大きな問題になっている。ヒトのプリオン病は世界中にみられ,その発症率は100万に1人前後である。プリオン病には弧発性,遺伝性,そして感染によるものがあり,長期間の潜伏期間の後に発症する。感染によるプリオン病としては,脳硬膜移植による医原性CJDや1980年代後半から英国で大発生した狂牛病の肉をヒトが食したことが原因で発生した変異型CJDが挙げられる3)。このようなウシからヒトへの種の壁を越えたプリオン病の感染は牛肉の安全性の問題とも重なり,プリオン病は大きな社会問題となった。プリオン病は発症すると進行が速い難病であり,残念ながら確立された治療法は存在しない。その病態解明および治療薬の開発はプリオン病を根治するうえで,また,食肉の安全性を維持するという点でも重要な研究課題となっている。
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