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文献詳細

雑誌文献

生体の科学64巻2号

2013年04月発行

文献概要

特集 特殊な幹細胞としての骨格筋サテライト細胞

筋サテライト細胞の多分化能

著者: 橋本有弘1

所属機関: 1独立行政法人 国立長寿医療研究センター研究所 再生再建医学研究部

ページ範囲:P.105 - P.110

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 多分化能を有することは組織特異的幹細胞(成体幹細胞)に共通な特徴の一つであると考えられている。例えば神経幹細胞は,神経細胞およびグリア細胞に分化し,単一の細胞から神経組織の基本構成単位を構築することができる。骨格筋特異的幹細胞である筋サテライト細胞は分化刺激に応じて筋線維,骨芽細胞および脂肪細胞に分化することから多能性幹細胞の一つであると言われている。しかし,筋サテライト細胞が発生・成長の過程で筋線維以外の細胞に分化するという証拠はなく,むしろ非筋細胞への分化は厳密に抑制されている。筋サテライト細胞の示す非筋細胞への分化能は筋組織の正常な発生,成長,再生においては顕在化しない,あくまでも潜在的な分化能力である。では筋サテライト細胞はなぜ,何のために非筋細胞への分化能力を保持しているのだろうか。

 筋サテライト細胞の多分化能は,“BMPによる骨格筋における異所性骨分化の誘導”と“胚性線維芽細胞における多分化能の誘導”という二つの発見を基盤として解析が進められてきた。しかし,最近の研究成果は,これらの先行研究を筋サテライト細胞の多分化能と結び付けて解釈すること自体に疑問を提示している。筋サテライト細胞が生体内において単能性細胞としての動態を示す以上,筋サテライト細胞の有する潜在的多分化能の生理的意味については,改めて検討する余地がある。

参考文献

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掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1883-5503

印刷版ISSN:0370-9531

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