文献詳細
特集 特殊な幹細胞としての骨格筋サテライト細胞
筋サテライト細胞の維持機構
著者: 渡邉洋子1 山口賢彦12 深田宗一朗1
所属機関: 1大阪大学大学院薬学研究科 細胞生理学分野 2静岡県立大学薬学部 生体情報分子解析学分野
ページ範囲:P.111 - P.116
文献概要
筋サテライト細胞は生体内で生理的に筋線維に分化する幹細胞であり,今までに報告された細胞の中では,最も筋形成能力が高い。Collinsらは筋サテライト細胞を筋線維に接着した状態で移植すると,1個の筋サテライト細胞が推定で約4,000個もの娘細胞を生み出すことができると報告している2)。このように,筋サテライト細胞の筋形成能力は非常に優れていることから,筋ジストロフィーなどの筋疾患治療に対する細胞移植源として期待されている。しかし,現実的には移植に必要な細胞数の確保が困難であるため,いかに筋サテライト細胞に近い能力を持った細胞をiPS細胞や線維芽細胞から分化誘導するかが鍵となっている。また,筋サテライト細胞の数や能力の低下は筋ジストロフィーなどの筋疾患の病態進行に直接かかわっている。さらに加齢による筋萎縮(サルコペニア)では同じく筋サテライト細胞の数や能力の低下がみられる。これらのことから,筋サテライト細胞と筋疾患との関連は現在非常に注目を集めている。しかし,なぜこれら筋疾患において,筋サテライト細胞の数や能力が減少するのかはほとんど理解されていない。さらに言えば,正常な状態において筋サテライト細胞を維持する分子機構が理解されていないのが現状である。そのため,筋ジストロフィーやサルコペニアの病態進行機序の理解だけでなく,iPS細胞や線維芽細胞から筋サテライト細胞様細胞を創製するうえでも,筋サテライト細胞を維持する分子機序を明らかにすることは急務の研究課題として挙げられている。
参考文献
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