文献詳細
文献概要
特集 特殊な幹細胞としての骨格筋サテライト細胞
衛星細胞による運動神経支配の再構築制御仮説
著者: 辰巳隆一1
所属機関: 1九州大学大学院農学研究院 資源生物科学部門 動物・海洋生物資源学講座 畜産化学分野
ページ範囲:P.122 - P.131
文献購入ページに移動 骨格筋の肥大・再生は,① 衛星細胞の活性化・増殖・分化・損傷部位への融合による筋細胞(細長い巨大な細胞なので“筋線維”と呼ばれる)の修復,および衛星細胞(サテライト細胞)同士の融合による新しい筋線維(新生筋線維)の形成,② 運動神経末端の筋線維への接着,③ 疲労耐性やエネルギー代謝などの筋特性に深くかかわる筋線維型(速筋型・遅筋型)の決定,④ 毛細血管網の再構築,の四つの現象を基盤としている。① は衛星細胞の重要な機能として古くから多くの研究対象になっており,筆者らの研究グループは衛星細胞の活性化・休止化機構に関して,物理刺激で作動する時系列制御機構を明らかにした(概要は後述)。
一方,これらの研究過程で,分化期に移行した衛星細胞が神経軸索成長ガイダンス因子,semaphorin 3A(Sema3A)を合成・分泌することを見出し,上記 ② に関して,運動神経末端がいつ・どこに・どのように再生筋線維や新生筋線維に接着するかを衛星細胞が能動的に制御している可能性を初めて提起した1,2)。本稿では,この着想に至った実験データの概略を紹介する。また,Sema3Aの発現・分泌が,衛星細胞の活性化・休止化因子である肝細胞増殖因子(HGF)で特異的に誘導されることから,“物理刺激を引き金として,筋線維構造と運動神経支配の回復がHGFにより時系列的に協調進行する”という“プログラムド メカノバイオロジー”についても併せて概説する。
一方,これらの研究過程で,分化期に移行した衛星細胞が神経軸索成長ガイダンス因子,semaphorin 3A(Sema3A)を合成・分泌することを見出し,上記 ② に関して,運動神経末端がいつ・どこに・どのように再生筋線維や新生筋線維に接着するかを衛星細胞が能動的に制御している可能性を初めて提起した1,2)。本稿では,この着想に至った実験データの概略を紹介する。また,Sema3Aの発現・分泌が,衛星細胞の活性化・休止化因子である肝細胞増殖因子(HGF)で特異的に誘導されることから,“物理刺激を引き金として,筋線維構造と運動神経支配の回復がHGFにより時系列的に協調進行する”という“プログラムド メカノバイオロジー”についても併せて概説する。
参考文献
297:C238-252, 2009
297:C227-230, 2009
, in press, doi:10.1111/asj. 12014
9:2482-2496, 2010
301:C1270-1279, 2011
239:79-94, 2001
83:712-717, 2012
42:622-628, 1987
194:114-128, 1998
146:233-242, 1999
424:391-397, 2003
36:1782-1793, 2006
104:5545-5550, 2007
66:649-666, 2009
485:69-74, 2012
190:891-904, 1978
223:174-180, 1989
, in press, doi:10.1016/j. biocel. 2012.10.003
302:C1741-1750, 2012
298:C465-476, 2010
298:C448-449, 2010
79:279-290, 2008
81:11-20, 2010
掲載誌情報