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文献詳細

雑誌文献

生体の科学64巻2号

2013年04月発行

特集 特殊な幹細胞としての骨格筋サテライト細胞

筋疾患治療へのサテライト細胞の利用

著者: 伊藤尚基12 鈴木友子1 武田伸一1

所属機関: 1国立精神・神経医療研究センター神経研究所 遺伝子疾患治療研究部 2東京工業大学大学院 生命理工学研究科 生命情報専攻

ページ範囲:P.162 - P.167

文献概要

 筋ジストロフィーとは,骨格筋線維の壊死と再生を繰り返しながら,進行性の筋力低下,筋萎縮を引き起こす遺伝性筋疾患の総称である。発症年齢,臨床症状や遺伝形式の違いにより,いくつかの異なる病型に分類される。その中でも,最も発生頻度が高く,重篤な経過を示すものが,ジュシェンヌ型筋ジストロフィー(Duchenne muscular dystrophy;DMD)である。DMDはX染色体連鎖性遺伝をとり,患者のほとんどは男児である。また,その発生頻度は新生男児3,500人に1人であり,2-5歳ごろから起立・歩行障害などの異常が生じ,筋力低下が進行し,骨格筋の線維化および脂肪化が進むことで,患者の多くが30歳以前で心不全,呼吸障害などによって死亡する。

 DMDはジストロフィン・タンパク質(dystrophin)をコードするジストロフィン遺伝子の変異によって発症する。骨格筋細胞膜には細胞外基底膜と細胞内骨格を繋ぐジストロフィン糖タンパク質複合体が存在し,運動などによって生じる機械的な負荷に対して,筋線維を保護する役割を持っている。ジストロフィン遺伝子の変異によるジストロフィン・タンパク質の欠損によって,ジストロフィンのみならず,ジストロフィン糖タンパク質複合体が骨格筋細胞膜から消失する。その結果,骨格筋細胞膜が負荷に対して脆弱になり,筋変性や筋壊死が引き起こされる。DMDの多くはDNA配列の欠失や挿入により,変異したジストロフィン遺伝子から転写されるmRNAのアミノ酸読み取り枠にずれが生じるアウト・オブ・フレーム変異により発症する。しかし,イン・フレーム変異によって,短縮したジストロフィンが発現する場合は,より軽症であるベッカー型筋ジストロフィー(Becker muscular dystrophy;BMD)と呼ばれる表現型をとる。

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掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1883-5503

印刷版ISSN:0370-9531

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