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文献詳細

雑誌文献

生体の科学64巻2号

2013年04月発行

解説

肥満炎症説

著者: 菅波孝祥1 小川佳宏2

所属機関: 1東京医科歯科大学大学院 医歯学総合研究科 臓器代謝ネットワーク講座 2東京医科歯科大学 糖尿病・内分泌・代謝内科

ページ範囲:P.176 - P.182

文献概要

 メタボリックシンドロームは内臓脂肪型肥満を中心に,糖代謝や脂質代謝の異常と血圧上昇が集積して動脈硬化性疾患を起こしやすい状態と定義される。最近では虚血性心疾患や脳血管障害に加えて,慢性腎臓病(CKD)や非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)などもメタボリックシンドロームの合併症と考えられている(図1)。メタボリックシンドロームの病態生理において,脂肪組織は上流に位置しており,肥満に伴う脂肪組織機能の異常が全身に波及してメタボリックシンドロームを惹起すると考えられる1-3)。近年のアディポサイトカイン(アディポカイン)研究の著しい進歩により,脂肪組織は生体内で最大の内分泌器官として多彩な生命現象に関与することが明らかになってきた。したがって,肥満の脂肪組織を起点として,アディポサイトカインの質的・量的な異常を介し,全身臓器の機能障害に至ると想定される(図1)。すなわち,肥満の脂肪組織ではTNFα(tumor necrosis factor-α)やIL-6(interleukin-6),MCP-1(monocyte chemoattractant protein-1)などに代表される炎症性サイトカインが過剰に産生され,これに対して,アディポネクチンに代表される抗炎症性(インスリン感受性)サイトカインの産生は減少し,このようなアディポサイトカインの産生調節異常が全身のインスリン抵抗性を惹起すると考えられている1-3)。一方,動脈硬化性疾患を中心とする生活習慣病や癌,自己免疫疾患,神経疾患など種々の慢性疾患に共通の病態基盤として,慢性炎症の関与が指摘されている1-3)。実際,メタボリックシンドロームの中核をなす肥満の脂肪組織においても,様々な免疫担当細胞の浸潤や炎症性サイトカインの過剰産生が観察され,その病態生理的意義が注目されている。本稿では脂肪組織の慢性炎症(脂肪組織炎症)に焦点を当てて,最近の知見を概説する。

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掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1883-5503

印刷版ISSN:0370-9531

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