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文献詳細

雑誌文献

生体の科学64巻2号

2013年04月発行

文献概要

仮説と戦略

アミロイドの構造多形に着目したプリオンの感染と伝播の分子機構

著者: 田中元雅1

所属機関: 1理化学研究所 脳科学総合研究センター

ページ範囲:P.183 - P.190

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 アンフィンゼンのドグマによると,タンパク質は一次構造(アミノ酸配列)に基づいて一つの最安定構造に折り畳まれる。それとは対照的に,タンパク質がミスフォールディングし,凝集するときには異なる構造を持つ様々なアミロイドを形成しうること,つまり,アミロイドには構造多形が存在することが,近年明らかになってきた1)。興味深いことに,構造や物性の違うアミロイドは細胞へ異なる生理的影響をもたらす。その顕著な例として,同一のアミノ酸配列を持つプリオンタンパク質から,異なる表現型を示す“プリオン株”が生じる現象がある2-4)。プリオン感染がプリオンタンパク質のみで引き起こされるとするならば,プリオン株の出現機構の解明はプリオン生物学で最も重要な研究課題の一つである。

 本稿では,同一のアミノ酸配列を持つモノマーのタンパク質から,アミロイドの構造多形が生じる分子機構,およびアミロイドのコンフォメーションの差異が細胞表現型の異なるプリオン株や細胞毒性の違いをもたらす分子機構について,最近,主に酵母プリオンの研究から明らかにされてきた知見を紹介する。これらの研究成果はプリオンの感染,および伝播のメカニズムの解明につながるだけでなく,近年明らかになってきた多くの伝播性神経変性疾患の新たな治療戦略の開発にも道を拓くと期待される。

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掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1883-5503

印刷版ISSN:0370-9531

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