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特集 細胞接着の制御
接着斑の群島構造モデルと形成機構―1分子イメジングによる解明
著者: 柴田明裕1 楠見明弘1
所属機関: 1京都大学 物質―細胞統合システム拠点,および,再生医科学研究所
ページ範囲:P.232 - P.238
文献購入ページに移動接着斑(focal adhesion)は,細胞膜上に形成されるミクロンサイズの構造体で,細胞が動いたり止まったりするときの足裏の働きをする。細胞は接着斑を足がかりにして細胞外基質に結合し,細胞内の筋肉を働かせて,動いたり停止したりする。このため,接着斑は組織形成,癌細胞の転移や浸潤,創傷治癒など生理・病理学的過程に重要な働きをしている。細胞移動時には接着斑は進行方向で形成され,後方で分解され,これらは10-20分間程度で生起する。一方,接着斑には10種類以上のタンパク質が集まっているが,従来,接着斑はこれらのタンパク質の大規模集積体(数ミクロンサイズ)と考えられてきた。このようなタンパク質の大規模集積体を,10分間という時間スケールで形成・分解するのは不可能のように思われる。この問題は長年,細胞生物学の大きな謎であった。われわれは最近,1分子追跡法により接着斑はタンパク質が集積した単一構造体ではないことを見出した。それに基づき,われわれは接着斑の“群島モデル(archipelago model)”と接着斑形成のモデルを提案した。すなわち,“タンパク質が集合した小さな島が群島のように集まって,接着斑という膜領域を形成する。そのため,分子の拡散によって,すべての島で同時に形成・分解が起こるため,接着斑の素早い形成と分解が可能になる”というモデルである。これは接着斑の重要分子であるインテグリン,Rac1,PIXの1分子挙動の追跡によって支持された。
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