特集 細胞接着の制御
肺がん細胞の骨転移に関与する遺伝子の探索
著者:
後東久嗣1
柿内聡司1
西岡安彦1
所属機関:
1徳島大学大学院ヘルスバイオサイエンス研究部 呼吸器・膠原病内科学分野
ページ範囲:P.279 - P.282
文献購入ページに移動
肺がんは近年の診断および治療法の進歩にもかかわらず,治療成績は他臓器のがんと比べ改善されているとは言い難い。肺がんは診断時に骨,脳,肝,腎などへ既に転移していることが多く,これらの多臓器への好転移性が肺がんの難治性の理由として挙げられるだろう。特に骨転移は病的骨折やがん性疼痛を惹起することで患者のquality of life(QOL)を著しく阻害する。近年の分子生物学的手法の発達により,がん転移のメカニズムが徐々にではあるが解明され,転移関連因子を標的としたいわゆる分子標的治療薬が開発されている。がん骨転移に対しても,receptor activator of nuclear factor-κB ligand(RANKL)を標的としたdenosumabやビスホスホネート製剤が日本でも承認され実施臨床で使用されているが,がん骨転移を十分にコントロールするには至っていない。そのため,今後も骨転移関連遺伝子を探索,検証していくことは重要な課題と言える。本稿では,ヒト肺がん細胞株によるマウス多臓器転移モデルとcDNAマイクロアレイを用いた骨転移関連遺伝子プロファイリングについて,われわれの試みを中心に概説する。