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文献詳細

雑誌文献

生体の科学64巻3号

2013年06月発行

文献概要

連載講座 細胞増殖・3

S期の開始におけるサイクリンAの役割

著者: 千葉櫻拓1

所属機関: 1東京農業大学応用生物科学部 バイオサイエンス学科

ページ範囲:P.284 - P.291

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 真核生物の細胞周期進行においてはサイクリン依存性キナーゼ(cyclin dependent kinase;CDK)という高度に保存された制御タンパク質がエンジンの役割を果たしており,CDKによる標的因子のリン酸化が細胞周期を進める原動力になっていると考えられている。CDKは単独では不活性であり,サイクリンというアクセル役の制御タンパク質が結合することによって活性化される1)。さらに,サイクリンはCDKがリン酸化する標的タンパク質を選別する機能を有する2)。サイクリンは周期的に現れるタンパク質という名前のとおり,細胞周期の各時期において異なるタイプのものが発現しており,それぞれが特定のCDKパートナーと結合することにより,時期特異的に異なるサイクリン-CDK複合体が機能している(図1)。

 これらのサイクリンがそれぞれ標的タンパク質を選別することにより,細胞周期の各時期において異なる標的タンパク質がリン酸化され,細胞周期が秩序だって進行すると考えられている3)。すなわち,複数のサイクリンがエンジンのギアを変えるように働いて,細胞周期の各ステップを進んでいくと例えることができる。しかしながら,各サイクリン-CDK複合体が時期特異的にリン酸化する標的因子については,解明されているものはわずかであり,エンジンからギアを経て実際に細胞周期を進行させる車輪に繋がる分子経路についてはいまだ不明な点も多い。本稿では細胞周期の重要なステップである染色体DNA複製を行うS期への移行と進行に関与するサイクリンAを取り上げ,S期開始過程におけるその役割について,筆者らの研究成果を紹介しつつ概説する。

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掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1883-5503

印刷版ISSN:0370-9531

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