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文献概要
特集 予測と意思決定の神経科学
意思決定にかかわる二つの神経回路
著者: 坂上雅道1
所属機関: 1玉川大学 脳科学研究所
ページ範囲:P.301 - P.308
文献購入ページに移動 意思決定とは複数の選択肢の中から,より良い結果をもたらすものを選び出し,実行することである。選択肢がもたらすと予想される報酬と罰の総和を価値と呼び,この価値の生成プロセスがわれわれの意思決定を特徴づける。近年の心理学・神経科学的研究は,われわれの脳の中に複数の意思決定プロセスが存在することを明らかにしつつある。事象と報酬の経験的関係を客観的・確率的に結び付けて価値を計算するプロセスは,モデルフリーシステムと呼ばれ,直接経験によって形成された連合を概念や論理によって結び付け,直接経験していない価値の予測を可能にするプロセスは,モデルベースシステムと呼ばれる1-3)。最終的な意思決定は,これらのプロセスの協調と競合によって成り立っている。特に,ヒトを特徴づける複雑な判断能力は,シミュレーション可能な内部モデルを持つモデルベースシステムにあると考えられる。この機能の理解はヒトの意思決定や思考の特徴の理解につながり,ひいては人間の科学的理解にもつながる。しかし,どのような神経メカニズムがそれを可能にしているのかについては,まだほとんどわかっていない。ここでは,最近われわれが行った,ヒトを被験者としたfMRI実験,サルを被験体として,前頭前野と大脳基底核線条体から記録を行った電気生理学実験を紹介しながら,モデルベース的意思決定の神経メカニズムについて議論する。
参考文献
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