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文献詳細

雑誌文献

生体の科学64巻4号

2013年08月発行

文献概要

特集 予測と意思決定の神経科学

報酬予測を作る大脳基底核回路の形態学的解明

著者: 藤山文乃1

所属機関: 1同志社大学大学院 脳科学研究科 神経回路形態部門

ページ範囲:P.309 - P.313

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 1997年のSchultzらによるサルの電気生理の仕事から,中脳にあるドーパミンニューロンが報酬の予測からのずれ(報酬予測誤差)に応答していることが知られるようになった1)。また,Wickensらはドーパミン投射を受ける線条体ニューロンにおいて,大脳皮質からの入力と黒質からのドーパミン入力に依存するシナプス可塑性が起こることを報告した2)。これらの報告から線条体シナプスは報酬予測誤差に依存した可塑性を引き起こし,大脳基底核の回路を使って時々刻々更新される強化学習を行っているという仮説が提案された3-5)

 この強化学習における線条体内の役割分担を提唱したのがBartoらで,彼らは線条体のストリオソーム・マトリックス構造に着目し,actor-critic仮説を提唱した4)。この説によると線条体のマトリックスは基底核出力部位(淡蒼球内節/黒質網様部)を通じて行動選択を行い(actor),ストリオソームは報酬予測を行い(critic),その投射先のドーパミンニューロンで報酬予測誤差が計算され,そのドーパミンニューロンがさらに線条体へ投射することによってactor-critic学習が行われる。

参考文献

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31:552-558, 2008

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1883-5503

印刷版ISSN:0370-9531

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