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文献詳細

雑誌文献

生体の科学64巻4号

2013年08月発行

文献概要

特集 予測と意思決定の神経科学

報酬構造学習―ドーパミン神経細胞をめぐる新仮説

著者: 中原裕之1

所属機関: 1理化学研究所 脳科学総合研究センター 理論統合脳科学研究チーム

ページ範囲:P.323 - P.328

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 われわれの日常生活は,朝食に何を食べるか,職場で上司に何を報告するかなど,意思決定の連続である。意思決定は未来に影響を与える。逆に言えば未来予測が意思決定の際には働く。このように未来予測の学習は意思決定において本質的な役割を果たすことになる。経験から予測を修正,つまり学習することが適応的な意思決定を可能にするのである。予測の中でも,報酬の予測はヒトや動物にとって原初的な部類に属する。報酬予測は動機づけ行動の土台ともなる1-4)。そのため,報酬予測の学習とその意思決定“価値に基づく意思決定;value-based decision making”(以下,価値意思決定)における脳機能の解明は神経科学の重要なテーマとなっている。近年,この価値意思決定に関する脳研究が報酬予測の脳計算理論“強化学習;reinforcement learning theory”に支えられ発展してきた。そこでは,いわゆるドーパミン報酬予測誤差仮説が大きな役割を演じている5)。本稿では,われわれが先ごろ新たに提唱した“ドーパミン報酬構造学習仮説”を紹介する。

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No. 13-01,2013

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1883-5503

印刷版ISSN:0370-9531

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