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特集 予測と意思決定の神経科学
セロトニン神経系の障害を伴う精神疾患における意思決定神経基盤の解明
著者: 酒井雄希1 成本迅1
所属機関: 1京都府立医科大学大学院医学研究科 精神機能病態学
ページ範囲:P.334 - P.337
文献購入ページに移動意思決定については,すぐに得られる小さな報酬と,得るのに時間がかかる大きな報酬のどちらかを選択するという“異時点間の選択問題”を用いた研究が進んでいる。すぐに得られる報酬を過度に頻繁に選ぶ“衝動的選択”は衝動性をとらえる指標の一つとされ,セロトニン機能低下や前頭葉や線条体といった脳領域の障害で引き起こされることが知られている1,2)。Tanakaらは,この衝動的選択とセロトニン,および線条体との関連について,ヒトにおいて食事中のトリプトファンを調整することで健常者に低セロトニン状態と高セロトニン状態を作り,それぞれの状態で異時点間の選択問題を解く課題を遂行中の脳活動をfunctional MRI(fMRI)により測定することで明らかにした。脳活動の時系列データは計算論モデルに基づいて解析され,線条体・島皮質において,腹側が衝動的な短期報酬予測に関与し,背側が長期報酬予測に関与することと,セロトニン濃度が低いときは短期報酬予測に関連した腹側の活動が優位になることを報告している3,4)。
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