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文献詳細

雑誌文献

生体の科学64巻4号

2013年08月発行

特集 予測と意思決定の神経科学

線虫C. elegansにおけるモノアミンによる神経制御

著者: 笹倉寛之1 森郁恵1

所属機関: 1名古屋大学大学院 理学研究科 生命理学専攻 分子神経生物学グループ

ページ範囲:P.354 - P.359

文献概要

線虫C. elagansの神経系

 線虫C. elegansは1960年代にSydney Brenner博士によって,発生の仕組みと神経系機能の解明に適するモデル生物として選ばれた1)。発生に関しては,2002年に「器官発生とプログラム細胞死の遺伝制御」の研究で,John Sulston,Robert Horvitz両博士と共にノーベル生理医学賞を受賞している。神経系については,Brenner博士が1960年代当初からシステムバイオロジー的な研究戦略を持っていたことはあまり知られていない。神経の配線すべてを明らかにしてneural computationを解読し,究極的にはコンピューターシュミレーションによって行動を再現する構想を描いていた。自伝「My Life in Science」に書かれているように,ある時期コンピューターに没頭したことが,この着想に大きな影響を与えたのである。偶然か必然か,おおむね彼の構想に従ってサイエンスが動いており,その先見性は驚愕と言うしかない。

 線虫は302個の神経細胞からなり,Whiteらによる電子顕微鏡解析から約5,000個のシナプス,約600個のギャップジャンクションからなる全神経接続が明らかにされている2)。哺乳類の神経系で使われている主要な神経伝達物質,グルタミン酸,アセチルコリン,GABA,モノアミン類などが線虫に存在している3-7)。イオンチャネルも,哺乳類のイオンチャネルのホモログが多数存在するが,ゲノム上に電位依存型Naチャネルの遺伝子は存在せず,線虫では活動電位は生じないと考えられている3)。とは言え,神経回路での速い電気的伝播は可能であり,Ca2+電流が重要な役割を果たしていると考えられる8)。一般に神経細胞内にイオンが流入した後に種々のプロテインキナーゼが活性化されるが,CAMKII,CAMKIV,PKA,PKC,PKG,MAPKなど,哺乳類のプロテインキナーゼのホモログが線虫に多数存在している。

参考文献

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掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1883-5503

印刷版ISSN:0370-9531

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