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増大特集 細胞表面受容体
嗅覚受容体の機能解析
著者: 白須未香1 東原和成1
所属機関: 1東京大学農学生命科学研究科 応用生命化学専攻 生物化学研究室
ページ範囲:P.420 - P.421
文献購入ページに移動1991年BuckとAxelによって,数百~千種類もの多重遺伝子族としてラットの嗅上皮から発見された嗅覚受容体は,90年代後半にかけて実際に匂いの受容を担うことが証明された1)。嗅覚受容体は平均して約310アミノ酸からなるGタンパク質共役型受容体(GPCR;G-protein coupled receptor)で,嗅神経細胞膜上に7回膜貫通型の構造をとる。そのうちの3~6番目の膜貫通領域に存在する疎水性アミノ酸が空間的なポケットを形成して,嗅粘液中に溶け込んだ匂い物質と疎水的相互作用によって結合すると考えられている。匂い物質が受容体に結合すると,細胞内のGタンパク質Gαolfを介して,アデニル酸シクラーゼⅢ(ACⅢ;adenylate cyclase Ⅲ)が活性化し,cAMP濃度の上昇が起こる。上昇したcAMPによってCNGチャネル(CNG channel;cyclic nucleotide-gated channel)が開き,細胞内へNa+やCa2+の流入が起こり,細胞が脱分極を起こす。さらに流入したCa2+は,Ca2+活性化型Cl-チャネル(CDC channel;calcium-dependent chloride channel)を開口させてCl-を細胞外へ流出させ,嗅神経細胞により大きな脱分極を引き起こし,活動電位が発生する。このように匂い情報は電気的信号へと変換され,嗅神経細胞の軸索を介して一次中枢である嗅球に伝達される1)。
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