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文献詳細

雑誌文献

生体の科学64巻5号

2013年10月発行

増大特集 細胞表面受容体

脊椎動物の排卵にかかわるプロスタグランジン受容体サブタイプEP4bの役割

著者: 萩原茜1 荻原克益1 高橋孝行1

所属機関: 1北海道大学 理学研究院 生物科学部門 生殖発生科学分野

ページ範囲:P.426 - P.427

文献概要

 プロスタグランジン(PG)は哺乳類の排卵,黄体の退縮,着床,妊娠の維持,出産などにかかわることが知られており,PGの作用が十分に発揮されない状況では生殖活動に重大な影響がもたらされることになる。

 アラキドン酸から合成されるPG類は,ロイコトリエン類やトロンボキサン類と共に,プロスタノイド類と呼ばれる。PG類にはPGF,PGI2およびPGE2がある。これらのPG類はアラキドン酸からサイクロオキシゲナーゼ(COX)の作用によりPGG2が産生される第一段階の反応と,次に,このPGG2を基質として,それぞれのPGに特異的な合成酵素がかかわる第二段階の反応を経て合成される。これらのPG類(PGF,PGI2およびPGE2)のほかにPGE1の存在も知られている。PGE1はアラキドン酸ではなく,ジ-ホモ-γ-リノレン酸を出発物質として合成されるPGである。哺乳類の生殖機能との関連で活発に研究されてきたPG類はPGE2およびPGFである。黄体形成ホルモン(LH)サージによって誘起される卵胞の卵丘細胞-卵複合体(cumulus-oocyte complex;COC)の拡張とそれに続いて起こる排卵に,いずれのPGE2とPGFが関与するかは種によって異なる。マウス,ラット,ウサギではPGE2が,ブタやヒツジではPGFが,それぞれ主たる役割を果たしていると思われる。PGの作用が発揮されるためには特異的な受容体が細胞表面に表現されることが必要である。哺乳類の生殖器官に発現するPG受容体として,PGE2に対する受容体4種(EP1,EP2,EP3およびEP4)とPGFに対する受容体2種(低親和性タイプと高親和性タイプ)が知られている2)。COX-2遺伝子とPGE2受容体EP2遺伝子の欠損マウスの解析から,LHサージによって卵胞に誘起されるCOCの拡張のプロセスにPGが重要な役割を果たしていることが明らかになった。

参考文献

362:76-84, 2012
79:1193-1226, 1999
102:8442-8447, 2005
86:113, 2012
8(1):e54482, 2013. Doi:10.1371/journal. pone. 0054482.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1883-5503

印刷版ISSN:0370-9531

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