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増大特集 細胞表面受容体
第5の脳下垂体後葉ホルモン受容体:V2bR
著者: 兵藤晋1 山口陽子1 海谷啓之2 今野紀文3
所属機関: 1東京大学大気海洋研究所 海洋生命科学部門 2国立循環器病研究センター研究所 生化学部 3富山大学大学院理工学研究部 生体制御学講座
ページ範囲:P.434 - P.435
文献購入ページに移動バソプレシンのV2型受容体は,哺乳類をはじめとする陸上脊椎動物の腎臓において水の再吸収に必須であり,その異常は腎性尿崩症という深刻な疾患を引き起こす。バソプレシンが抗利尿ホルモンと言われるゆえんであり,脊椎動物が陸上生活に適応できた理由の一つである。ではV2型受容体はいつどのようにして生じ,その機能を獲得してきたのだろうか? この謎を解き明かすべく,われわれは肺魚やメダカといった硬骨魚類1),さらには軟骨魚類のゾウギンザメを用いてバソトシン(バソプレシンと相同な分子で,哺乳類以外の脊椎動物が持つ)受容体の研究を行ってきた。その過程で第5の脳下垂体後葉ホルモン受容体であるV2bR(Rは受容体の意)を発見した2)。
ゾウギンザメでは5種類の後葉ホルモン受容体遺伝子を見いだし,構造ならびに細胞内情報伝達系の解析から,そのうちの3種類がオキシトシン受容体,V1aR,V1bRであることがわかった。残りの2種類は分子系統解析からV2型受容体と推測されたが,CHO細胞に受容体を発現させてバソトシンを作用させたところ,V2型受容体の特徴であるcAMPではなく,V1型受容体の特徴である細胞内Ca2+濃度が上昇するという予想外の結果であった。硬骨魚類のメダカでも相同な受容体を発見し,機能解析で同様の結果を得た。メダカにはcAMPをセカンドメッセンジャーとするV2型受容体が別に存在する1)。他の動物でのオーソログの検索,分子系統解析,さらには周辺遺伝子構造を比較するシンテニー解析により,今回発見した受容体がV2型受容体に近縁な新規受容体であることを証明し,既知のV2型受容体をV2aR,新規受容体をV2bRと呼ぶこととした(図1)2,3)。
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