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増大特集 細胞表面受容体
原子間力顕微鏡で捉えたNMDA受容体の動態
著者: 鈴木勇輝1 竹安邦夫2
所属機関: 1京都大学大学院理学研究科 化学専攻 2京都大学大学院 生命科学研究科 統合生命科学専攻 分子情報解析学分野
ページ範囲:P.440 - P.441
文献購入ページに移動グルタミン酸は哺乳類の中枢神経において,基本的かつ重要な神経伝達物質である。現在,高等動物の中枢神経系における速いシナプス伝達の大部分はグルタミン酸作動性であると考えられている。グルタミン酸受容体はイオンチャネルの開口によって情報伝達を行うイオンチャネル型(iGluR)と細胞内セカンドメッセンジャーに共役した代謝型(mGluR)とに大別され,前者はさらにアゴニストの選択性に基づいて,NMDA型とnon-NMDA型(AMPA型,K型)に分類される。NMDA受容体は他のiGluRと異なる特徴を有している。non-NMDA型受容体がK+やNa+を透過するのに対し,NMDA受容体は高いCa2+透過性を示す。さらにNMDA受容体は細胞外のMg2+によりチャネル活性が阻害され,その活性化にはMg2+の除去に加えてグルタミン酸とグリシンという2種のリガンドの結合が要求される。non-NMDA型受容体が通常の速い興奮性シナプス伝達に働いているのに対し,NMDA受容体は記憶・学習の基礎的現象であるシナプス可塑性に中心的役割を果たしている。NMDA受容体は脳虚血,ハンチントン病,パーキンソン病,アルツハイマー病などの病態時における神経細胞死にも深く関与していることが示唆されており,治療薬のターゲットとしても注目され,その構造と作動機構の理解が求められている。
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