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文献詳細

雑誌文献

生体の科学64巻6号

2013年12月発行

文献概要

特集 顕微鏡で物を見ることの新しい動き

1分子イメージングによる細胞膜シグナル変換機構の解明

著者: 楠見明弘12 鈴木健一1 藤原敬宏1 笠井倫志12

所属機関: 1京都大学 物質-細胞統合システム拠点 2京都大学 再生医科学研究所

ページ範囲:P.539 - P.544

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細胞はどれくらい賢いか?

 細胞に外部から刺激入力があると,細胞内への信号伝達が起こる。この信号の強度は,例えば図1の一番上の図の“全体の信号”のように変化するであろう。ここでは,PLCγ(ホスホリパーゼC-γ)が細胞膜にリクルートされてきて,細胞膜中のPI(4,5)P2(ホスファチジルイノシトール-4,5-二リン酸)を加水分解してIP3とdiacylglycerol(ジアシルグリセロール)などの2次メッセンジャーを生成するような経路を考えよう(これらは,その後,細胞内Ca2+動員やPKC(プロテインキナーゼC)の細胞膜への移行などにつながる)。縦軸の信号強度は細胞膜上に存在するPLCγの数としよう。細胞全体でのPLCγの応答は10-20分間程度続くことが多い。すなわち,全体で1,000秒とすると,PLCγ各分子(1分子ごと)の細胞膜へのリクルートは図1のモデルAで示すように,同じ程度,または,数百秒のオーダーであろう。

 しかし,このように考えると,実際には大きな問題に出くわす。すなわち,細胞全体のPLCγの応答(細胞膜上のPLCγの数,図1,1番上の図)は強度も時間変化も,よく制御されているはずである。もしPLCγの1分子ごとの細胞膜へのリクルートが図1のモデルAのように起こるとすると,細胞全体の応答曲線を正しく引き起こすことは非常に難しいことである。次の分子をいつ活性化すると,何分後には全体としての強度を正しくできるかなどが,極めてよく調整されていなくてはならないからである。

参考文献

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掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1883-5503

印刷版ISSN:0370-9531

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