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文献詳細

雑誌文献

生体の科学64巻6号

2013年12月発行

文献概要

特集 顕微鏡で物を見ることの新しい動き

新規レーザーによる多光子励起過程を用いた生体脳深部イメージング

著者: 根本知己1 川上良介1 飯島光一郎1 日比輝正1

所属機関: 1北海道大学 電子科学研究所 光細胞生物研究分野

ページ範囲:P.571 - P.576

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 われわれの身体の機能,生理機能は要素還元的に,身体・臓器・細胞・分子という階層性を持って理解されている。脳・神経系の研究者の多くは,全神経細胞がどのように“配線されているか”という回路網の解読と全神経細胞の活動状態をライブで捉えることができるならば,脳内の情報の流れと処理に関する理解が進み,脳の正常機能のみならず,精神疾患の発症や,その治癒への方途が拓かれると考えるであろう。しかし,現時点で個々の細胞の活動を区別して全神経細胞の活動を可視化する手法は存在しない。また,脳機能の解明には非侵襲的にリアルタイムでイメージングを行うことが必要となる。このためには共鳴イメージング(fMRI),PET,X線CTが広く用いられている。さらに最近では,光トポグラフィーも重要な位置を占めてきた。これらの方法論の問題点としては空間分解能が悪いため,個々の神経細胞の活動を見ることは困難であること,非測定量が一つに限られることが挙げられる。

 このような中で,多光子励起過程を用いたレーザー走査型蛍光顕微鏡(多光子顕微鏡,2光子顕微鏡)は神経科学分野に研究において不可欠なツールの一つになっている。脳機能研究においても,光学顕微鏡の空間分解能は上述の方法論と比較して優れており,個々の細胞の活動や細胞内小器官などの微細な構造のイメージングに用いられてきている。しかし,観察対象は薄いレイヤーに限られており,臓器深部の観察のためには侵襲的な手法を組み合わせる必要があった。その点は現在でも完全に解消されたとは言えないが,非侵襲“的”に臓器深部を観察するための方法論として,多光子励起過程を用いた顕微鏡法(多光子顕微鏡,2光子顕微鏡)が注目を浴びてきている。それは多光子顕微鏡は光学的な観察・測定法であるため,“生きた”対象内部(“in vivo”)で,多種類の分子や細胞の動態を,同時かつ高時空間分解能で計測することが可能という特徴を持つためである(図1)。

参考文献

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19:15947-15954, 2011
), 2013 Oct 11.[Epub ahead of print]

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1883-5503

印刷版ISSN:0370-9531

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