特集 顕微鏡で物を見ることの新しい動き
2光子励起顕微鏡を用いたFRETイメージング
著者:
上岡裕治1
松田道行1
所属機関:
1京都大学大学院医学研究科 病態生物医学分野
ページ範囲:P.577 - P.583
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ここ20年の光学顕微鏡技術の進歩で大きなものに,2光子顕微鏡を使って組織深部が見えるようになったことと,GFP(green fluorescent protein,緑色蛍光タンパク質)を使ったライブイメージングができるようになったことが挙げられよう。特にGFPは当初の分子の追跡マーカーとしての利用から,様々なバイオセンサー開発へと展開し,細胞の形を見るツールであった顕微鏡を,細胞の状態や分子の機能を見るツールへと変化させた。筆者らの研究室ではフェルスター(蛍光)共鳴エネルギー移動(Förster/fluorescent resonance energy transfer;FRET)とGFP技術を用いたバイオセンサーの開発に取り組んできたが,近年,このFRETバイオセンサーを発現するトランスジェニックマウスの開発に成功し,生きたマウスの組織で細胞機能を可視化し,生理的あるいは病的状態で,細胞機能がどのように変化し,それがどのような組織変化をもたらすのかについて研究している1,2)。本稿ではFRETイメージングの概説をした後,FRETマウスを使って得られる知見について述べる。