文献詳細
文献概要
特集 精神疾患の病理機構
シナプスと自閉症
著者: 田渕克彦12
所属機関: 1信州大学医学部分子細胞生理学講座 2独立行政法人 科学技術振興機構さきがけ
ページ範囲:P.3 - P.6
文献購入ページに移動 自閉症は社会的相互作用の障害,コミュニケーションの障害,興味の範囲と行動の著しい限局性を特徴とする神経発達障害であり,3歳ごろまでに,これらの症状の出現により診断されるが,根本的治療法が存在しないため,患者および家族は一生涯自閉症と付き合っていくことになる。自閉症の罹患率は年々増加傾向にあり,近年の統計では100人中3-4人という報告もある。この数字は実際に患者数が増えたのか,自閉症に対する認識の高まりにより診断数が増えたためか議論の余地が残る。自閉症の原因は不明のままだが,一卵性双生児の自閉症罹患率が高いことなどから,遺伝学的素因との関係が指摘されてきた。自閉症は症候群性のものと非症候群性のものに分けられる。症候群性の自閉症には脆弱X症候群,Prader-Willi症候群,Angelman症候群,結節性硬化症,Rett症候群などがあり,これらは広範な発達障害の中に自閉症症状が合併するもので,多くのものは原因となる特定の遺伝子ないしは遺伝子領域が突き止められている。一方,非症候群性のものでは,明確にメンデル型遺伝を示すものは一部であり,多くのものは多因性遺伝性だと考えられている。自閉症の分子病理像を捉え,診断,治療法の開発に役立てようと考えた場合,自閉症そのものの病態が単独で存在する非症候群性自閉症の原因を解明することが重要である。このため,単独で非症候群性の自閉症を起こし得る遺伝子を同定することが課題とされてきた。
参考文献
105:384-387, 1999
114:99-105, 2002
71:777-790, 2002
34:27-29, 2003
79:849-859, 2002
20:305-322, 2010
26:1738-1748, 2007
318:71-76, 2007
108:13764-13769, 2011
401:63-69, 1999
39:319-328, 2007
39:25-27, 2007
掲載誌情報