特集 精神疾患の病理機構
コピー数多型と精神疾患
著者:
仲西萌絵12
内匠透123
所属機関:
1理化学研究所 脳科学総合研究センター 精神生物学研究チーム
2広島大学大学院医歯薬保健学研究科
3JST,CREST
ページ範囲:P.16 - P.19
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ヒトの遺伝的多型として,最も普遍的に知られるものはSNP(single nucleotide polymorphism)であるが,近年遺伝子コピー数多型CNV(copy number variation)と呼ばれる新たな多型が発見され,研究が進められている1,2)。CNVとは,遺伝子領域の欠失,重複などにより,ある領域を1コピーしか保有していない,あるいは,一つ余分に3コピー保有したりする事象を言う。すなわち,ある遺伝子領域を,通常2コピー持つところを,異なるコピー数保有することである。CNVが起こるゲノム領域は一般に巨大であり,キロベース(kb)サイズから,メガベース(Mb)サイズにわたる。そのため,領域内には一つの遺伝子が含まれるとは限らず,複数の遺伝子が含まれることも多い。このCNVは,まれに起こりうる現象ではない。最近の解析ではヒトのゲノムの12%もの領域においてCNVが認められると報告されており,健常者も通常有する多型である3)。CNV研究の進展に伴い,ある特定遺伝子領域のCNVが,自閉症を含む精神神経疾患の発症と強く関連することが明らかとなっている。本稿では自閉症を含む精神関連疾患と関連するCNVの概略と,モデルマウスを用いた研究について概説したい。