文献詳細
特集 精神疾患の病理機構
統合失調症と炎症性サイトカイン
著者: 那波宏之1 湯川尊行2
所属機関: 1新潟大学 脳研究所 分子神経生物学分野 2新潟大学大学院 医歯学総合研究科 精神医学教室
ページ範囲:P.43 - P.47
文献概要
サイトカインは,通常アミノ酸数30-500程度の比較的大きなポリペプチドに該当し,アミノ酸数30以下のペプチドを除外することが多い。また,その機能性から大きく三つに分類される。炎症を駆動させる炎症性サイトカイン,逆に炎症を沈静化させる抗炎症性サイトカイン,細胞増殖をも促す増殖性サイトカインである。炎症性サイトカインにはインターロイキン類やケモカインなどがあり,抗炎症性サイトカインには内在性のインターロイキンアンタゴニストやその受容体の細胞外ドメインなどがある。一部のサイトカインには上皮細胞や線維芽細胞に対し,強い細胞増殖能を持つ細胞増殖性サイトカインがある。これらの炎症生体防御システムには,大きな副作用も随伴するため,平常時では厳密にコントロールされている必要がある。通常,抗炎症性サイトカインや副腎髄質ホルモンが炎症生体防御システムの暴走を防いでいる。しかし,いったん,この制御システム自身が崩壊すると,リウマチ熱,喘息,クローン病といった慢性の炎症疾患に見舞われてしまうのである2)。
参考文献
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