文献詳細
特集 精神疾患の病理機構
統合失調症におけるエピジェネティクス解析
著者: 池亀天平12 文東美紀1 笠井清登2 岩本和也1
所属機関: 1東京大学大学院 医学系研究科 分子精神医学講座 2東京大学大学院 医学系研究科 精神医学分野
ページ範囲:P.55 - P.59
文献概要
統合失調症は青年期ごろから前駆症状が出現し,幻覚妄想や自我障害といった陽性症状を主体とした進行期を経た後,意欲低下や感情の平板化が前景の慢性期に至るといった進行性の病像変化を認める。疫学研究から統合失調症の遺伝率は60-80%と言われており,遺伝学的連鎖解析からは10以上の遺伝子が候補遺伝子として報告された。しかし,単一遺伝子変異に基づく病態解明は困難なことから,統合失調症は疾患貢献度(オッズ比)の小さな遺伝子変異が集積することで発症に至るcommon disease common variantという概念が一般に受け入れられてきた。この概念に基づきゲノム上に多数存在する一塩基多型(SNPs)をマーカーとして疾患脆弱性領域を探索する,全ゲノム関連解析(genome-wide assosiation study;GWAS)に注目が集まり,その結果,幾つかの有望な統合失調症関連SNPsが同定された。また,マイクロアレイや次世代シークエンサー技術の登場により,稀な遺伝子変異であるが高いオッズ比を示すコピー数変異の存在などが報告された。しかし,これまでの検出された遺伝リスクをすべて考慮しても,80%近い遺伝率とは大きな解離があり“missing heritability”と呼ばれる大きな議論となっている。
参考文献
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