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特集 細胞の少数性と多様性に挑む―シングルセルアナリシス A.シングルセルアナリシスへ向けた技術開発
FRETバイオセンサーによるERK活性の単一細胞解析
著者: 青木一洋1
所属機関: 1京都大学大学院医学研究科 時空間情報イメージング拠点
ページ範囲:P.107 - P.112
文献購入ページに移動ERK(extracellular signal-regulated kinase)分子はRas-Raf-MEK-ERK情報伝達系の出力部位に位置するセリン・スレオニンキナーゼである。ERK分子は成長因子などの細胞外刺激に伴い,活性化ループのスレオニン,チロシン残基がMEK分子によってリン酸化され活性化する。その後,転写因子などの下流の基質分子をリン酸化し,遺伝子発現を誘導・抑制することで細胞の増殖や分化といった様々な表現型を制御する2)。このような多様な表現型はERK分子の活性化の持続時間による違いによって引き起こされると考えられている。例えば,ラット褐色細胞腫PC12細胞やヒト乳腺上皮MCF-10A細胞では,一過的にERK分子が活性化されると細胞が増殖し,持続的にERK分子が活性化されると細胞分化が引き起こされる3,4)。しかしながら,ERK分子活性の時間変化がどのようにして細胞機能へと変換されるのかは議論の余地が残っていた。また,これまでの先行研究の多くは生化学的手法により,数百万個の細胞を使ってERK分子の活性の平均値を測定してきたが,一つの細胞の中でERK分子の活性がどのように変動するのか,また,その機能的な役割についても不明であった。
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