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文献詳細

雑誌文献

生体の科学65巻2号

2014年04月発行

文献概要

特集 細胞の少数性と多様性に挑む―シングルセルアナリシス A.シングルセルアナリシスへ向けた技術開発

拡張ナノ空間を用いたaL-fL高機能分析デバイスの開発

著者: 馬渡和真1 北森武彦1

所属機関: 1東京大学大学院工学系研究科応用化学専攻 バイオエンジニアリング専攻

ページ範囲:P.127 - P.132

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 分析システムを数センチメートル角の基板に集積化するマイクロ化学チップの研究がここ10年で急速に進展して,微量・高速・高機能な化学・バイオデバイスが実現した。また,一部ではマイクロ化学チップを搭載したシステムが実用化されるに至っている。さらに最近では,分析場を数十-100nmの空間,すなわち拡張ナノ空間へ集積化する研究が進展している(図1)。拡張ナノ空間は従来のナノテクノロジーが対象としてきた孤立分子とマイクロテクノロジーが対象としてきた通常の凝縮相液体をつなぐ過渡的領域であり,液体の特性が発現する領域として非常に興味深い領域である(図1)。しかし,波長よりも短く極微小空間となる拡張ナノ空間は,加工・流体制御・検出などいずれも非常に困難であり,これまで未開拓な領域であった。

 そこで当研究室は世界に先駆けて拡張ナノ空間化学・流体の基盤技術を確立してきた。例えば,ガラス加工・低温接合,aL液体・fL/秒の流体制御,非蛍光性分子zmolの検出などが挙げられる1)。これら新しい研究ツールを用いて拡張ナノ空間の溶液物性を調べた結果,バルクとは異なるユニークな溶液物性を数多く見いだしてきた。例えばプロトン拡散速度の上昇,粘度の上昇,誘電率低下,酵素反応速度の加速,化学平衡のシフトなどが挙げられる。いずれも流路のサイズが数百ナノメートルになると発現するという共通の傾向を示した。これらの結果を総合して,壁面から50nmの領域で水が緩やかに構造化したプロトン移動相モデルを提案してきた。従来の吸着相・バルク相に加えてプロトン移動相を考慮することで溶液全体の平均物性を説明するモデルである。

参考文献

1)Mawatari K, Kazoe Y, Tsukahara T et al:Extended-Nano Fluidic Systems for Chemistry and Biotechnology, Imperial College Press, United Kingdom, 2012
391:2745-2752, 2008
1228:51-56, 2012
8:1237-1242, 2012
Dec 16. 2013

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1883-5503

印刷版ISSN:0370-9531

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