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文献詳細

雑誌文献

生体の科学65巻3号

2014年06月発行

特集 器官の発生と再生の基礎

多能性幹細胞から臓器へ―Blastocyst Complementation法

著者: 村山秀之1 小林俊寛1 中内啓光1

所属機関: 1東京大学医科学研究所 幹細胞治療研究センター 幹細胞治療分野

ページ範囲:P.191 - P.196

文献概要

 体細胞に数種の遺伝子を導入することにより,胚性幹細胞(embryonic stem cell;ES細胞)と同等の多分化能と増殖能を持つ人工多能性幹細胞(induced pluripotent stem cell;iPS細胞)が作製された1,2)。この革新的な技術は幹細胞の医学応用へ新たな扉を開こうとしている。iPS細胞は患者自身から樹立可能な多能性幹細胞であり,ES細胞の抱えている“受精卵の利用”と“拒絶反応”という問題を解決しうる。これにより自家移植医療の実現が理論上可能となり,夢の医療として期待されている。当初はレトロウイルスベクターによるゲノムへの挿入変異が危惧されたが,最近ではエピソーマルベクターや合成RNA,センダイウイルスベクターを用いた外来遺伝子のゲノムへの挿入を伴わない樹立方法が開発されている。さらにiPS細胞は患者から樹立可能なため再生医療の材料としてだけではなく,病態解明,新薬の創出,毒性試験など,多彩な利用を可能にする。このように患者自身のiPS細胞から目的の細胞を作り出し治療に用いるといった,まさに21世紀の医療を変革することが期待される。

 一方,これら多くの研究が細胞を移植して治療する細胞治療を目的としているのに対し,移植可能な臓器を作り出すことも再生医療における究極的な目標の一つである。患者自身のiPS細胞から臓器が作り出せれば圧倒的なドナー不足に悩まされる移植医療の切り札となり,さらに移植後も免疫抑制剤の必要のない理想的な再生医療が実現できる。また,臓器を作り出す過程を解析することは臓器発生のメカニズムを知るうえでも意義が大きい。

参考文献

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小林俊寛,中内啓光:内分泌・糖尿病・代謝内科35(2):95-100, 2012

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1883-5503

印刷版ISSN:0370-9531

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