特集 器官の発生と再生の基礎
肝再生の分子細胞生物学
著者:
江波戸一希1
加藤英徳1
宮島篤1
所属機関:
1東京大学 分子細胞生物学研究所 発生・再生研究分野
ページ範囲:P.233 - P.237
文献購入ページに移動
肝臓は体内における最大重量の実質臓器であり,各種の代謝,解毒,胆汁の産生,血清タンパク質の産生など多種多様な機能により生体の恒常性を保っている。これら多種多様の機能の大部分は肝重量の約80%を占める肝実質細胞である肝細胞が担う。肝臓には小腸で吸収された栄養に富んだ血液が門脈から流入し,肝特有の毛細血管網である類洞を経由して,中心静脈から肝臓外へと流出する(図1)。肝細胞は類洞に沿って一列に配置され,類洞を構成する類洞内皮細胞は有窓構造により血液と肝細胞間の効率の良い物質交換を可能にしている。一方,肝細胞が産生する胆汁は肝細胞間に形成された毛細胆管を通って,胆管上皮細胞からなる肝内胆管へと集められ,肝外胆管を経て最終的に十二指腸へと排出される。肝細胞と類洞内皮細胞の間にはディッセ腔と呼ばれる間隙が存在し,そこには星細胞が位置している。星細胞は線維芽細胞であり,傷害時に失われた細胞の隙間を埋めるためのコラーゲンや細胞増殖因子を分泌する。一方,過剰なコラーゲンの分泌は肝臓の線維化に繋がることが知られている。