文献詳細
文献概要
特集 古典的代謝経路の新しい側面
生細胞内ATP濃度イメージング
著者: 今村博臣1
所属機関: 1京都大学 白眉センター 生命科学研究科
ページ範囲:P.294 - P.298
文献購入ページに移動 細胞が自身を維持する,あるいは増殖するためには,エネルギーを外から取り込む必要がある。動物細胞の場合は糖や脂質が主要なエネルギー源である。よく知られているように,それらに含まれるエネルギーの多くは,一度アデノシン三リン酸(ATP)のリン酸結合にいったん蓄えられ,その後に細胞の様々な場所で利用される。しかし,生きた細胞内でのATPの時空間的な振る舞いについては驚くほど知られていない。
動物細胞では,主に細胞質における解糖系とミトコンドリアにおける酸化的リン酸化によってATPが合成されている。一方でATPは細胞内の様々な場所で消費されている。ATPが合成される場所から消費される場所まで辿り着くには決して簡単ではない(図1)。第一に,負に強く帯電したATPはそのままでは疎水的な膜を透過できない。ミトコンドリア内膜のATP:ADP交換輸送体1),神経小胞のVNUT2)など,ATPの膜輸送にかかわる分子は一部知られているが,小胞体やゴルジ体といったオルガネラへどのような仕組みでATPが運ばれているかはいまだに多くが謎である。第二に,細胞の内部は分子が非常に込み合った状態であり,かつATPと相互作用するタンパク質に非常に富んでいることを考えると,たとえ低分子と言えども希薄溶液中と比べてATPの拡散速度は大きく制限されていると考えられる。こうした制約の中でどのようにして細胞は必要なときに必要な場所にATPを届けているのか,実際はまだよくわかっていない。それどころか,細胞の中でATPがどのように分布しているのかさえも不明であった。
動物細胞では,主に細胞質における解糖系とミトコンドリアにおける酸化的リン酸化によってATPが合成されている。一方でATPは細胞内の様々な場所で消費されている。ATPが合成される場所から消費される場所まで辿り着くには決して簡単ではない(図1)。第一に,負に強く帯電したATPはそのままでは疎水的な膜を透過できない。ミトコンドリア内膜のATP:ADP交換輸送体1),神経小胞のVNUT2)など,ATPの膜輸送にかかわる分子は一部知られているが,小胞体やゴルジ体といったオルガネラへどのような仕組みでATPが運ばれているかはいまだに多くが謎である。第二に,細胞の内部は分子が非常に込み合った状態であり,かつATPと相互作用するタンパク質に非常に富んでいることを考えると,たとえ低分子と言えども希薄溶液中と比べてATPの拡散速度は大きく制限されていると考えられる。こうした制約の中でどのようにして細胞は必要なときに必要な場所にATPを届けているのか,実際はまだよくわかっていない。それどころか,細胞の中でATPがどのように分布しているのかさえも不明であった。
参考文献
1778:1978-2021, 2008
105:5683-5686, 2008
13:251-262, 2012
440:470-476, 2006
76:5445-5449, 1979
3:871-873, 1957
106:15651-15656, 2009
4:295-305, 2003
111:273-278, 2014
6:709-715, 2011
25:368-379, 2014
8:e1002561, 2012
154:651-663, 2013
152:479-491, 2013
107:16823-16827, 2010
115:2047-2058, 2005
268:22265-22268, 1993
297:58-72, 2009
289:2205-2216, 2014
85:7889-7896, 2013
掲載誌情報