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文献詳細

雑誌文献

生体の科学65巻4号

2014年08月発行

文献概要

特集 古典的代謝経路の新しい側面

生細胞内ATP濃度イメージング

著者: 今村博臣1

所属機関: 1京都大学 白眉センター 生命科学研究科

ページ範囲:P.294 - P.298

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 細胞が自身を維持する,あるいは増殖するためには,エネルギーを外から取り込む必要がある。動物細胞の場合は糖や脂質が主要なエネルギー源である。よく知られているように,それらに含まれるエネルギーの多くは,一度アデノシン三リン酸(ATP)のリン酸結合にいったん蓄えられ,その後に細胞の様々な場所で利用される。しかし,生きた細胞内でのATPの時空間的な振る舞いについては驚くほど知られていない。

 動物細胞では,主に細胞質における解糖系とミトコンドリアにおける酸化的リン酸化によってATPが合成されている。一方でATPは細胞内の様々な場所で消費されている。ATPが合成される場所から消費される場所まで辿り着くには決して簡単ではない(図1)。第一に,負に強く帯電したATPはそのままでは疎水的な膜を透過できない。ミトコンドリア内膜のATP:ADP交換輸送体1),神経小胞のVNUT2)など,ATPの膜輸送にかかわる分子は一部知られているが,小胞体やゴルジ体といったオルガネラへどのような仕組みでATPが運ばれているかはいまだに多くが謎である。第二に,細胞の内部は分子が非常に込み合った状態であり,かつATPと相互作用するタンパク質に非常に富んでいることを考えると,たとえ低分子と言えども希薄溶液中と比べてATPの拡散速度は大きく制限されていると考えられる。こうした制約の中でどのようにして細胞は必要なときに必要な場所にATPを届けているのか,実際はまだよくわかっていない。それどころか,細胞の中でATPがどのように分布しているのかさえも不明であった。

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掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1883-5503

印刷版ISSN:0370-9531

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