文献詳細
文献概要
連載講座 細胞増殖・9
チェックポイントキナーゼ1(Chk1)による細胞周期の制御
著者: 後藤英仁12
所属機関: 1愛知県がんセンター研究所 腫瘍医化学部 2名古屋大学大学院医学系研究科 細胞腫瘍講座
ページ範囲:P.364 - P.369
文献購入ページに移動DNA損傷から細胞周期停止に至るチェックポイント機構においては,まず,ホスファチジルイノシトール3-キナーゼ(PI3キナーゼ)類縁の二つの蛋白質リン酸化酵素が重要な役割を担っている(図1)。一つは,ATM(ataxia-tel angiectasia mutated;毛細血管拡張性運動失調症[AT]の原因遺伝子として同定されたことが名前の由来である)で,主に(電離放射線などで引き起こされる)DNAの二重鎖切断の際に活性化される3)。もう一つは,ATR(ATM-and Rad3-related)で,DNA修復過程などで生じる一本鎖DNAによって活性化される4)。このように活性化したATM,ATRは,それぞれ,チェックポイントキナーゼ2,1(Chk2,Chk1)をリン酸化することで活性化へと導く(図1A)。Chk2,Chk1はチェックポイントシグナルをDNA損傷部位から核全体に伝えるトランスデューサーとしての役割を担っている。以下に細胞周期停止に至る分子機構を各シグナル伝達経路に分けて概説する。
参考文献
掲載誌情報