icon fsr

文献詳細

雑誌文献

生体の科学65巻5号

2014年10月発行

文献概要

増大特集 生命動態システム科学 Ⅰ.定量生物学 1.分子・細胞の計測 5)転写制御

(3)エピゲノム・ダイナミクス

著者: 太田邦史1

所属機関: 1東京大学大学院総合文化研究科 生命動態システム科学拠点事業 複雑生命システム動態研究教育拠点

ページ範囲:P.414 - P.415

文献購入ページに移動
■エピゲノムによる遺伝子発現調節

 1942年ごろからコンラッド・ワディントンによって提唱されはじめた“エピジェネティクス”という言葉は,発生学の概念である“後成説(エピジェネシス)”に由来する。ワディントンは1個の受精卵が卵割後に多様な細胞に特殊化し,発生していくようすを有名な“エピジェネティック・ランドスケープ”という図と共に説明した1)。この概念はDNAやクロマチン構造の分子的実体が明らかになった今日では“変化した遺伝子発現状態を記憶または継続させる染色体構造変化”と捉えられるようになっている。

 エピゲノムはDNAの上位に実装された生命情報の記憶レイヤーと考えることができる2)。これにより,同じDNAを持つ細胞や個体が,外部環境に応じて柔軟で多様な表現型(特定の遺伝子セットのON/OFFのパターンから生み出される表面的な性質)を保持することが可能になる。また,その表現型については,分化細胞のように一定期間記憶することも可能であるし,大きな環境変化に際して柔軟に変化する可塑性を示すこともできる。

参考文献

1)Waddington CH:The Strategy of the Genes:George Allen and Unwin, Pergamon Press, London, 1957
2)太田邦史:エピゲノムと生命.講談社,2013
. 456:130-134, 2008
. 4:2889, 2013
. 14:794-806, 2013

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1883-5503

印刷版ISSN:0370-9531

雑誌購入ページに移動
icon up

本サービスは医療関係者に向けた情報提供を目的としております。
一般の方に対する情報提供を目的としたものではない事をご了承ください。
また,本サービスのご利用にあたっては,利用規約およびプライバシーポリシーへの同意が必要です。

※本サービスを使わずにご契約中の電子商品をご利用したい場合はこちら