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文献概要
増大特集 生命動態システム科学 Ⅱ.数理生物学 1.理論
(1)セルオートマトンと生物学—時間発展パターン
著者: 時弘哲治1
所属機関: 1東京大学 大学院数理科学研究科
ページ範囲:P.436 - P.437
文献購入ページに移動■用途:自然・社会現象の数理モデル
セルオートマトン(cellular automaton;CA)は有限個の状態をとるセル(細胞)から構成され,離散的な時間ステップで,自己の状態を更新してゆく離散力学系である。図1にルール90ECAと呼ばれる一次元的に配列し,活性状態(赤)と不活性状態(白)の二つの状態をとるCAの時間発展の様子を示す。各セルの次の時間ステップでの状態は,自分の両隣のセルのうち一方のみが活性状態であれば活性状態に,そうでなければ不活性状態になる,という単純なものである。ところが,この時間発展のパターンにおいて,セルの個数と経過時間の比を固定し,パターンの大きさを一定に保ったままで経過時間無限大の極限をとると,Sierpinskiの三角形と呼ばれる図形になることがわかる。Sierpinskiの三角形は自己相似性を持ち,その空間次元がlog23≒1.585となる典型的なフラクタルである。CAは簡単な時間発展規則をもつ有限個(あるいは高々可算個)の要素からなる系でありながら,微分方程式のような連続性を仮定したモデルでは再現することの難しい複雑なパターンを構成できることから,自然・社会現象の数理モデルとして用いられている1)。
セルオートマトン(cellular automaton;CA)は有限個の状態をとるセル(細胞)から構成され,離散的な時間ステップで,自己の状態を更新してゆく離散力学系である。図1にルール90ECAと呼ばれる一次元的に配列し,活性状態(赤)と不活性状態(白)の二つの状態をとるCAの時間発展の様子を示す。各セルの次の時間ステップでの状態は,自分の両隣のセルのうち一方のみが活性状態であれば活性状態に,そうでなければ不活性状態になる,という単純なものである。ところが,この時間発展のパターンにおいて,セルの個数と経過時間の比を固定し,パターンの大きさを一定に保ったままで経過時間無限大の極限をとると,Sierpinskiの三角形と呼ばれる図形になることがわかる。Sierpinskiの三角形は自己相似性を持ち,その空間次元がlog23≒1.585となる典型的なフラクタルである。CAは簡単な時間発展規則をもつ有限個(あるいは高々可算個)の要素からなる系でありながら,微分方程式のような連続性を仮定したモデルでは再現することの難しい複雑なパターンを構成できることから,自然・社会現象の数理モデルとして用いられている1)。
参考文献
1)加藤恭義,光成友孝,築山 洋:セルオートマトン法.森北出版,1998
2)J. von Neumann:Theory of Self-Reproducing Automata. University of Illinois Press, 1966
. 86:021918, 2012
. 239:1573-1580, 2010
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