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増大特集 生命動態システム科学 Ⅱ.数理生物学 1.理論
(5)トップダウンとボトムアップの橋渡し
著者: 小松崎民樹1
所属機関: 1北海道大学 電子科学研究所 分子生命数理研究分野
ページ範囲:P.444 - P.445
文献購入ページに移動■ボトムアップとトップダウン
生命動態システムでは,ミクロな分子レベルで生起する化学反応や分子の動態と,メソスコピックなシステムレベルで生じる非平衡性とが階層を越えて動的に相互作用している。それらの生命動態システムを理論的に研究するアプローチは大別して二つある。一つは還元論的なボトムアップアプローチで,システムの構成要素(分子)の性質を評価しながら,システムを捉えようとする試みである。もう一つは,構成論的なトップダウンアプローチで,モデルをあらかじめ絞り込んで,モデルの妥当性を実験に照らし合わせながら検証する試みである。前者は構成要素を大事にする代償として,システム全体を俯瞰することが極めて困難となる。後者は必要最低限の要素を仮定し,メタファーを創ることで,システムレベルでの考察を可能とする一方,実際,細胞内の分子群に対してどれくらい濃度概念が成立しえるか?1)分子個性(分子の構造や動態の多様性)がどれくらい効いているか2)など,根本な未解決問題が存在する。
生命動態システムでは,ミクロな分子レベルで生起する化学反応や分子の動態と,メソスコピックなシステムレベルで生じる非平衡性とが階層を越えて動的に相互作用している。それらの生命動態システムを理論的に研究するアプローチは大別して二つある。一つは還元論的なボトムアップアプローチで,システムの構成要素(分子)の性質を評価しながら,システムを捉えようとする試みである。もう一つは,構成論的なトップダウンアプローチで,モデルをあらかじめ絞り込んで,モデルの妥当性を実験に照らし合わせながら検証する試みである。前者は構成要素を大事にする代償として,システム全体を俯瞰することが極めて困難となる。後者は必要最低限の要素を仮定し,メタファーを創ることで,システムレベルでの考察を可能とする一方,実際,細胞内の分子群に対してどれくらい濃度概念が成立しえるか?1)分子個性(分子の構造や動態の多様性)がどれくらい効いているか2)など,根本な未解決問題が存在する。
参考文献
. 86:2459-2462, 2001
. 2:87-94, 2006
. 329:533-538, 2010
. 111:058301, 2013
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