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増大特集 生命動態システム科学 Ⅱ.数理生物学 6.組織・多細胞社会
(6)脳・神経システムの情報科学
著者: 寺前順之介1
所属機関: 1大阪大学大学院情報科学研究科 バイオ情報工学専攻
ページ範囲:P.480 - P.481
文献購入ページに移動中枢神経系は大脳新皮質,海馬,大脳基底核,視床,小脳など構造の異なる幾つもの部位からなるが,すべての部位が多数の神経細胞からなるネットワークとして構成されている。これら大規模なネットワーク上での神経細胞間の信号伝達が,脳・神経システムの情報処理の実体である。
各神経細胞の状態は主にその膜電位で記述できる。ネットワークから切り離された神経細胞では,膜電位は約70mV程度の安定した静止膜電位に減衰するが,ネットワーク中では他の神経細胞からのシナプス入力によって増減し,その値が約50mVの発火閾値に到達すれば,急速かつ一過的な膜電位上昇(スパイク発火)が発生する(図A)。スパイク発火が神経細胞の出力であり,シナプスを介して結合する他の神経細胞へ入力し,受け手側神経細胞(後シナプス神経細胞)の膜電位をわずかに変化させる。このような入力が多数積算して,後シナプス神経細胞の膜電位が発火閾値に達すれば,今度はそこでスパイク発火が発生し,シナプスを介して再びネットワークへと伝播する。これが神経細胞間の基礎的な情報伝達メカニズムである。
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