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文献詳細

雑誌文献

生体の科学65巻5号

2014年10月発行

文献概要

増大特集 生命動態システム科学 Ⅲ.合成生物学 1.人工細胞

(1)人工細胞モデルの創成

著者: 神谷厚輝12

所属機関: 1公益財団法人神奈川科学技術アカデミー 人工細胞システムグループ 2JSTさきがけ

ページ範囲:P.492 - P.493

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■はじめに

 細胞膜は細胞の内外を隔て,細胞質を外部環境と異なる状態で維持し,細胞の生命活動に不可欠な役割を果たしている。また,細胞膜はホルモンや神経伝達物質を介した情報伝達,サイトカインによる細胞間情報交換の場である。このように細胞内外で物質のやり取りをする反応は,膜貫通型タンパク質(膜タンパク質)が主にかかわっている。膜タンパク質は自己免疫疾患,がんなど広く重篤な疾病と関連していることから,その分子機能のメカニズムを解明・理解する研究の推進が強く勧められている。しかし,細胞系で単一の膜タンパク質の機能解析は細胞構造の複雑さゆえに膜タンパク質の素反応の観察は難しい。そこで,膜タンパク質を細胞から抽出し,これらの膜タンパク質を細胞膜と同じ分子からなるモデル人工細胞膜(リポソーム)に再構成することにより,膜タンパク質の素反応を観察する研究が盛んに行われている。特に直径約10μmの細胞サイズリポソーム(巨大リポソーム)は光学顕微鏡下でリアルタイムに可視化できる唯一のリポソームであり,膜タンパク質機能解析研究のみならず,細胞融合や分裂,生体分子による細胞膜の形態変化などの人工細胞モデル研究が盛んに行われている1)。膜タンパク質を再構成したリポソーム(プロテオリポソーム)は,膜タンパク質を抽出する際に使用した界面活性剤を透析やバイオビーズなどで除去し作製される。この方法を用いて様々な膜タンパク質の再構成に成功し,機能観察にも成功しているが,細胞サイズのプロテオリポソームの作製が困難なことや,膜タンパク質の配向性制御が困難なことが挙げられる。したがって,界面活性剤を用いた自己組織的なプロテオリポソーム作製法に代わる界面活性剤を用いないプロテオリポソーム構成法の開発が求められる。本稿では界面活性剤を用いない細胞サイズのプロテオリポソーム作製法を紹介する。

参考文献

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. 32:9899-9907, 2011

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1883-5503

印刷版ISSN:0370-9531

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