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特集 脳と心の謎はどこまで解けたか
人の心を汲み取るとは─社会知性の脳計算
著者: 中原裕之1
所属機関: 1理化学研究所脳科学総合研究センター理論統合脳科学研究チーム
ページ範囲:P.48 - P.52
文献購入ページに移動 われわれの日常生活の大半は何らかの社会行動である。つまり,“ヒトである”ことの多くはその社会行動の中に表れると言える。したがって,この社会行動をつかさどる神経基盤の解明は,すなわち“ヒト”を理解することにつながると言えるであろう。脳神経基盤の解明は脳科学の重要目標であると同時に,広汎な諸科学の発展を促す壮大な目標でもある。脳科学の発展は著しい。100年前,あるいは50年前,10年前に比べると実験技術の進展は目覚ましく,新たな知見も急速に増している。とは言え,この究極の目標までの道のりは今はまだ遠いかもしれない。しかし,筆者はいつかそこにたどり着くことができると信じている。
ここで筆者の構想をまず述べておきたい。社会行動の根幹には,人々が互いの心や行動を推断する社会知性がある。この社会知性の脳メカニズムを,大胆な捨象を経て“自己システム+他者システム”の観点から解明する。それには実験と理論の融合研究が必要であり,社会知性の脳計算の基本構成要素を徹底的に明らかにすることが最初の重要な一歩となる。このような話をされても何のことやらさっぱり,と思う方もいるであろう。本稿では,この構想の源流を述べたうえで,筆者の研究室の最近の研究成果を紹介し,今後の展望について簡単に述べたい。
ここで筆者の構想をまず述べておきたい。社会行動の根幹には,人々が互いの心や行動を推断する社会知性がある。この社会知性の脳メカニズムを,大胆な捨象を経て“自己システム+他者システム”の観点から解明する。それには実験と理論の融合研究が必要であり,社会知性の脳計算の基本構成要素を徹底的に明らかにすることが最初の重要な一歩となる。このような話をされても何のことやらさっぱり,と思う方もいるであろう。本稿では,この構想の源流を述べたうえで,筆者の研究室の最近の研究成果を紹介し,今後の展望について簡単に述べたい。
参考文献
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