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文献詳細

雑誌文献

生体の科学66巻2号

2015年04月発行

文献概要

連載講座 生命科学を拓く新しい実験動物モデル-2

フェレットを用いた高等哺乳動物の脳神経医学研究

著者: 河崎洋志12

所属機関: 1金沢大学医薬保健研究域医学系脳細胞遺伝子学教室 2金沢大学医薬保健研究域脳・肝インターフェースメディシン研究センター

ページ範囲:P.175 - P.180

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 進化の過程で高等哺乳動物,その中でも特にヒトは脳を発達させ高次脳機能を獲得してきた。この著しく発達したヒトの脳神経系の理解は,脳神経医学研究の究極の目標の一つと言えるであろう。しかし,分子遺伝学的な研究に現在多く用いられているマウスの脳はヒトの脳ほどには発達しておらず,様々な重要な脳神経構築がマウスでは欠落していることから,マウスからどこまでヒトの脳を理解できるのかというマウスを用いた脳研究の限界も指摘されている。
 そこで近年,霊長類や食肉類などの高等哺乳動物を用いた脳神経医学研究が注目され始めている。その理由として,①霊長類や食肉類などの高等哺乳動物の脳には,マウスの脳にみられない発達した脳神経構築が存在していること,②霊長類や食肉類などの脳神経系に対する遺伝子操作技術が開発され,分子遺伝学的な研究が可能となってきたことが重要である。例えば,ヒトを含む霊長類や食肉類の大脳皮質の表面に存在する脳回(脳表面のしわ;gyrus)がマウスには存在しないことから,脳回の形成機構や脳回異常を来す疾患の病態解明にはマウスでは限界がある。後述のように,脳回以外にもOSVZ(outer subventricular zone),眼優位性カラムなど多様な脳神経構築が高等哺乳動物で特徴的に発達しているが,その解析は遅れている。これらの脳神経構築の機能的重要性や形成メカニズム,進化過程,更には疾患病態などを霊長類や食肉類を用いて研究することにより,ヒトの脳の理解につながることが期待されている。

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掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1883-5503

印刷版ISSN:0370-9531

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