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特集 進化と発生からみた生命科学
発生進化の法則性と謎─発生砂時計モデル
著者: 内田唯1 入江直樹1
所属機関: 1東京大学大学院理学系研究科生物科学専攻動物発生学
ページ範囲:P.191 - P.195
文献購入ページに移動 動物の胚発生では,たった一つの細胞から最終的には魚やヒトのように高度に組織化,複雑化された形態が作り上げられていく。受精卵という単純な形態に前後左右など極性情報が加わり,更にその情報に基づき位置情報などが積み上げられていく。この積み上げ型の過程から考えると,発生初期の分子発生プロセスほど基盤的かつ重要であり,進化的にも変化が少なかったであろうと想像できる。ところが,実際は異なる動物間で最も“似ている”のは発生中期であるらしい。包括的遺伝子発現情報を用いた定量解析により,脊椎動物では発生中期が進化的に最も保存されていることが明らかになった。形態的にもこの時期は類似性が非常に高い。つまり,胚発生の進化的多様性は砂時計のように中ほどがくびれているようなのである。現時点ではなぜそのような法則性がみられるかは不明であるが,解明されれば億年単位の形態進化と発生をつなぎ得る魅力的なトピックとして大きな焦点となっている。本稿では,発生砂時計モデルの概説と,砂時計型の保存性の謎に対して発生過程の性質から説明を迫る試みを紹介する。
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