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特集 進化と発生からみた生命科学
カブトムシの雄特異的な角形成
著者: 新美輝幸1
所属機関: 1名古屋大学大学院生命農学研究科資源昆虫学研究分野
ページ範囲:P.228 - P.233
文献購入ページに移動 甲虫の顕著に発達した角は,英国の自然科学者Darwinの性選択に関する著書『The Descent of Man and Selection in Relation to Sex』(1871年)1)にも取り上げられ,古くから多くの研究者を虜にしてきた興味深い形質である。なかでも,コガネムシ科では顕著に発達した角を持つ種が数多く存在している2)(図1)。これらの角は,種間において形,数,形成部位などの点で極めて多様性に富むことが知られ,また,種内においても栄養条件により角の大きさが著しく異なるケースが多々みられる。一層の表皮細胞シートが突出した構造である角は,既存の器官の改変からではなく独自に獲得された“新奇形態”である。角の進化をめぐっては,興味深い謎の多くが未解明のままである。例えば,「角という新奇形態はどのようなメカニズムにより獲得されたのか」,「近縁種間で異なる角の多様性はどのような発生メカニズムの改変によりもたらされたのか」,「角は多くの系統で独立に獲得されているが,それぞれの系統で異なる発生メカニズムによって獲得されたのか,あるいは系統は異なっていても角の獲得メカニズムは同じなのか」などが挙げられよう。このような進化学上の謎を解き明かすことを目指して,筆者らはカブトムシをモデルに角形成メカニズムの解明に取り組んでいる。
参考文献
1)Darwin C:The Descent of Man and Selection in Relation to Sex. John Murray, London, 1871
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