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特集 進化と発生からみた生命科学
アゲハの擬態紋様
著者: 藤原晴彦1
所属機関: 1東京大学大学院新領域創成科学研究科先端生命科学専攻
ページ範囲:P.267 - P.271
文献購入ページに移動 われわれの身の周りには多様な昆虫が生息しているが,傍らの虫に気づかないことも多い。昆虫は周りの植物に身を隠し目立たないようにする一方,毒々しい紋様や体色により捕食者に警告するような虫もいる。何かに似せて捕食者をだますような生存戦略は,総称して“擬態”と呼ばれる。本稿では,われわれの身近にいるアゲハ蝶の多様な擬態紋様の形成メカニズムを紹介すると共に,進化研究において蝶の紋様がクローズアップされつつある現状にも触れる。
アゲハ蝶の仲間(アゲハチョウ上科)は世界に500種類ほどいるが,その中でもアゲハチョウ科(Papilionidae )に属するナミアゲハ(Papilio xuthus )やキアゲハ(Papilio machaon )は日本人にも馴染み深い。われわれがこれらの蝶を研究している主な理由は,近縁種の間で多様な紋様変異がみられ,更に幼虫,蛹,成虫の各発生ステージでユニークな擬態を呈するからである。それぞれの擬態紋様と形成機構をみてみたい。
アゲハ蝶の仲間(アゲハチョウ上科)は世界に500種類ほどいるが,その中でもアゲハチョウ科(
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